始まっても、その行事は続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、今季始まったんだからこのような無計画な飲み集まりは終わるまでやめましょうよ」

 

そう告げたのは、いつも一人勝ちをする勇汰だった。今日も今日とて集まってみんなで飲み明かしている最中だ。新たに参戦した陽路を含む飲みメンツは放っておくと翌日に支障をきたすモノと何も変化がないものにわかれる。

 

「だーっっっっってさぁ、陽路が昇格したあのときみんな忙しかったからこういうときって感じがするんだもーん」

 

もうすでにできあがっているようでベロベロになっている諒が勇汰の言葉を聞き、ぐでーっと床に寝っ転がる。その奥で丹雅が無表情で頭をなでまわしている。

 

「だーってじゃないでしょこれ、明日とかどうするんです?!諒さんに至っては試合2日後じゃないですか!」

「そうは言うけどよ〜」

「そんじゃーオレと腕相撲しよーよ諒。負けたら酒没収って言うのはどう?」

 

わがままを言う諒に対してすぐ側で馬刺しを食べていた俊が一つ提案をした。彼の表情は全く酔っていないように見える。

 

 

「…いいぜ、俺の腕がぁ~?火を噴くぜぇ~!!!!」

「え?俊くん仕掛けちゃった感じ?」

「まぁね、今の諒には勝てそうだから」

 

陽路の問いに対し自信満々に答える俊。腕相撲では俊と諒が互角の力で勝敗がついていない。

 

「よーっしゃ俊、やんぞ!!!!」

「いいよ、勝ってやる!!」

「…諒と俊うっさい…」

 

寝そべって腕を組み準備をする2人に黄架が冷たい一言。丹雅はそのままレフェリーをするようで、わくわくした表情で2人の手を持っている。側で陽路がさらにわくわくした目で2人を見つめている。そんな4人を見て勇汰はため息をつきながら、落ち着いて日本酒をたしなんでいる郡斗と琉璃の元へ向かう。

 

 

「何?なにかし始めたの?」

「俊が諒さんに腕相撲をしかけて勝負開始ですよもう」

「まったく、落ち着いて勝負事を決められないのでしょーかねぇ…あ、勇汰ものむかい?」

「いただきますよもう…のまないとやってられなくなっちゃった…」

 

渡されたグラスに氷を入れ、焼酎をついでもらう。ふわっと好きな芋の香りがする。

 

 

「(…まぁ、楽しいのはたのしいから、いっか)」

 

 

カラン、とコップをならして冷えた部分をのむと、勇汰はほおに手を置き少しずつウトウトする。

 

 

「よーっしゃー!決着ついた!!!」

「あんなにハンデあると思ってたのに!!負けた!!!!」

「りょーさんおれも!!!!お手合わせ願えますか!!!」

「いいぜ、陽路勝負しようぜ!」

「んもー、声のボリューム抑えてってば」

 

 

こんな夜も、この時期には必要なのかもしれない。

 

 

そう思いながら、勇汰は深くふわっと優しいぬくもりを目から覚えていった。

 

 

 

 

 

…カラン。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよ…は!?」

 

 

朝、時計は9時を指している。勇汰が重たいまぶたをこすり机から顔を上げると、そこには酔い潰れてしまった他のメンツが床に転がっていた。あの後勇汰は珍しく寝落ちをし、机に突っ伏してしまっていたようだ。

 

 

「なんてこと…普段コントールしまくる三銃士(黄架、郡斗、俊)までこんなことになっているとは…ショックでっかい…じゃなくって!さすがにこれはまずすぎる!」

 

幸い勇汰はいつもより少ない量しか酒を飲んでいないため体調に不調は出なかったが、これは確実に大変なことになる。

 

 

「(これ、多分明日にも響く人出てくるぞ?ここは、やるしかないか)」

 

 

決心をし、勇汰は1人皆のアフターケアをするため、手始めにと薬局へ足を運ぶのだった──。