集まって食べるのと一人で食べるの、どうしてそんなに違うんだろう。

 

 

 

 

 

 

「泰蜜!!!!!その唐揚げ俺が食べようとしていた大きさ!!!」

「乃明が手を出さないのが悪いよーだ(ムシャムシャ」

「こらこら、二人とも喧嘩はなしだぜ~?まだまだ揚げてもらっているんだから」

「紫月は黙ってな!揚げてんのお前じゃないだろ!?」

「そーだそーだ!!!」

「…はー、手のかかる後輩だこと…ハハ」

 

ある食堂での出来事。いつものように、泰蜜と紫月、乃明は集まって行きつけの食堂に来ていた。大皿からおかずを取るというルールで、好きなおかずを注文し、そのおかずが大皿にのってご飯とともに現れるなんとも珍しげな食堂だ。

 

「ていうか、紫月食べなくていいんか?泰蜜にほとんど食べられてるぞ」

「ん、俺は大丈夫。これでも食べてるから」

「紫月ぃ、あんまり食わないならそのご飯ももらっていい?(ムシャムシャ」

「お前は遠慮という言葉を頭にたたき込んどけ、おかわり何杯でも無料なんだから…」

「あっはは!いいよ乃明。俺は大丈夫だからさ。ほら泰蜜食べていいぞ」

「わーい!(ムシャムシャ」

 

紫月が自分のところにあった白米を泰蜜にわたすと、泰蜜はうれしそうに受け取りそれを頬張る。口端に米粒がついている。そんな様子を見て乃明がため息をつく。

 

「ったく…なんでこう紫月は泰蜜に甘いんだよ…」

「甘やかしてるつもりはないんだけどね…」

「十分甘やかしてるっつの!それに対して…俺には全然…(ブツブツ」

 

乃明の言うとおりといったらそうだ。紫月は何かと隣県に甘い。紫月自身はみんな分け隔てなく接しているつもりだが、乃明はそうは思わず、不満を抱いていた。それが今の状況だった。

 

「はいはい、乃明もいいからはよ食べ?ニラ玉好きなんだろ?泰蜜に食べ尽くされる前に確保した分あるから」

「!!!紫月…!ありがとう!」

 

そっと、泰蜜に見つからないように取っていた中皿を乃明の前に置く。みるみると、乃明の目が輝きだしそれに食らいつく。

 

 

 

 

 

 

 

「(こうやって三人でいられるのは、この時だけなんだよなぁ…)」

 

 

 

 

 

 

 

今まで、何人ご飯に誘っただろうか。何人断られただろうか。何度一人で食べて何度さみしく、むなしくなっただろうか。

 

 

 

 

 

そう思うと、今のこの瞬間が自分の望んでいるモノで、大きな変化が起こるときまで幸せな空間にいられると最高な時だと理解する。

 

 

 

 

 

 

 

「(ずっと、一人で食べていたからなぁ…)」

 

 

 

 

 

そう思いつつ後輩二人のプチ喧嘩を仲裁し、各々好物をおいしそうに口に運ぶその表情を眺めていると、自然と心が満たされていく。

 

 

「さ、俺もあと少し食べるか~」

 

 

そう言って自身の腹を満たすために箸をもつ。この瞬間がいつまで続くかわからない。だけど。このままこの時間に居座れたら。いつも思うこと。でもその時間はあっという間に終わりを告げる。

 

 

 

「おいしかったー!な?乃明!」

「はいはいおいしかったな泰蜜…あの唐揚げのことはまだ許してないからな…」

「だから遅いのが悪いんだって」

「何!!??」

「こらこら、二人ともそこまで、ほら最後の挨拶しよう」

「はーい」

「ちえ…」

 

 

 

 

 

 

 

「「「ごちそうさまでした!」」」

 

 

 

 

明日は二人と何を食べようかな。